住宅新築工事の計画の話しを工務店さんからいただきました。
既にお客さんとある程度間取りの話しをされていて、手書きのラフプランをいただいて、それを元に図面を作って欲しいという注文でした。.
「ツーバイの方が強いから、ツーバイで行こうと思うんだけど」
と工務店さんに言われました。.
ツーバイの方が強い?・・・。
ツーバイ=ツーバイフォーの略。2x4工法→枠組壁工法のこと。.
”ツーバイの方が強いから”という言葉に、引っかかるところがありますが、ツーバイの方が耐震性は確保しやすいので、それでいいかなと思います。
それにしても、工務店さんでも在来工法(軸組工法)より枠組壁工法の方が強いと思っていることに、なんだか微妙な気持ちです。.
本来、軸組工法も枠組壁工法も、同じ性能を基準に造り方が決められているはずですから、耐震性は同じはずなんです。
同じ性能というのは、建築基準法で定められた基準です。
「新耐震設計基準」
(1)10年~20年に1度くらいの頻度で起こる中規模地震(100ガル程度=震度4~5程度)では、まったく損傷しないように設計する。
(2)建物の耐用年限中に1度遭遇するかもしれない大地震(400ガル程度=震度6弱程度)では、損傷や変形は生じても倒壊しないように設計する。.
木造も、鉄骨造も、鉄筋コンクリート造も、住宅も超高層ビルも、みんな同じ目標に対して、倒壊しないように設計されています。.
なら、なんで枠組壁工法の方が強いと言われるようになったのか。
それは、阪神淡路大震災など、この頃の大地震で、在来工法(軸組工法)の建物は多く倒壊したのに、枠組壁工法は倒壊が少なかったことが理由だと思います。.
在来工法の方が多く倒壊してしまった理由には、”構造の自由度”にあります。
在来工法は、昔ながら大工さんの経験や伝統が基準になってつくられてきました。伝統とか経験というのは、数値化できない曖昧なものです。
旧式の建築基準法は、その在来工法を基準に考えていたので、そんなに厳密に規則を作って縛っていませんでした。
それに比べ枠組壁工法は、元々外国の工法でしたが、昭和49年に(あ!私が生まれた年だ)建設省告示で工法が認められ、日本でも建てられるようになります。告示の中で、厳密に規則を作って造り方を縛っています。.
在来工法は、構造に対する検討を大工さんや設計者に任せていました。地震の力が、どう建物に作用して、どう抵抗するか、どこの柱や梁、筋交いに力がかかるかを、大工さんや設計者が考えないといけません。
それに対し、枠組壁工法は、規則でルール化して、大工さんや設計者は構造に対する検討をしなくても、ルールを守れば耐震性が確保できるようにしました。.
伝統の継承が薄れていったこと、住宅が利益や販売目的で大量生産された中で、構造に対する大工さんや設計者の検討が手を抜かれたことが、在来工法の大きな被害に繋がったと思います。.
阪神淡路大震災がきっかけで、大工さんや設計者にお任せだった在来工法が、それじゃダメだなということで、仕口の金物の選定が建築基準法の中で定められて、金物をどこにどうやって使うかがルール化されました。
耐力壁の偏心の検討が追加されたり、床倍率の考え方が入ってきたり、在来工法にも枠組壁工法の考え方がどんどん取り入れられるようになりました。.
よく考えれば、元々枠組壁工法は、昭和49年のときに技術的に検討されて、その技術的基準は「耐震性確保」が目的ですから、その考え方が在来工法に用いられるのは当然のことだと思います。.
きちんと耐震性について考えて設計すれば、建築すれば、在来工法も枠組壁工法も、どちらも同じ耐震性になるはずです。”ツーバイの方が強い”訳じゃないと思います。