住宅の場合で木造と鉄筋コンクリート造はどっちが地震に強い?

公開日:2010/10/15 23:54

Q 全く同じ間取りの建物(規模を一般的な2階建て住宅に限定)で比較した場合
  木造と鉄筋コンクリート造、どっちが地震に強いのか?
 
 ①鉄筋コンクリート造の方が強い
 ②木造の方が強い
 ③どちらも同じ
 
A 答えは ③どちらも同じ です。
 
 日本の建築物は、建築基準法によって構造耐力(強さ)が決められています。
 構造耐力の条件は、
  (1)10年~20年に1度くらいの頻度で起こりうる中規模地震(震度5程度)
    でまったく損傷しないこと
  (2)建物の耐用年限中に1度遭遇するかもしれない大地震(震度6程度)
    で、損傷や変形は生じても倒壊しないこと
 という原則に基づいて計画されます。
 
 これは、木造でも鉄筋コンクリート造でも同じです。
 木造の方が条件が緩いとか、鉄筋コンクリート造の方が条件が厳しいという
ことはありません。
 
 
 地震荷重は、自重に比例する水平力で計算されます。
 ですので、自重が大きくなる(重たい建物)ほど、柱や梁などの構造部材を
頑丈にする必要があります。
 
 建物自重は、
  木造         100kgf~200kgf/㎡
  鉄筋コンクリート造 1000kgf~1500kgf/㎡
 です。鉄筋コンクリート造の方が、10倍くらい重たい建物です。
 
 地震の時には、建物は変形しますが、その変形量も制限されています。
(層間変形角)
  木造 在来工法 1/120
      2x4工法 1/150
  鉄筋コンクリート造 1/200
  
  層間変形角1/120は、3mの階高(一階床から二階床までの高さなど)で
2.5cmの変形ということになります。
 
 建物の変形量も、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が厳しい数字になっています。
 (コンクリートですから、そんなに変形してたらバキッと割れてしまうので・・・)
 
 木造では構造計算はしませんが、鉄筋コンクリート造では構造計算をします。
 構造計算をした方が、きちんと設計されていて安心な気持ちになります。
 
 木造では、構造計算の知識やパソコンなどの計算ソフトが無くても、簡単に構造計画が
できるようにしてくれています。それが壁量計算です。
 建物の耐震要素になるのは耐力壁です。
 あらかじめ耐力壁の強さを構造計算して、それを壁倍率として設定しておくことで、必要な
耐力壁の数が計算できれば、あとは間取りの中に配置していくだけで構造計画ができるよう
にしてくれています。
 構造計算をするほど正確な数字ではありませんが、大雑把な分不利側を見た数字になる
ので、余力がある構造計画になります。
 
 木造よりも、鉄筋コンクリート造の方が精度がいいという違いです。
 
 
 建物の地震に対しての強さについて書きました。
 でも、日本では台風という風にたいする強さも重要な要素になります。
 風に対しては、重たい建物の方が有利ですので、鉄筋コンクリート造に分があると思います。
 木造でも、地震力よりも風圧力で耐力壁の必要数が決まる場合があります。
 
 物理的な部材の硬さについては、木よりもコンクリートの方が硬いので、「材料の強さ」で
比較すると、鉄筋コンクリート造の方が強いという答えになります。
 鉄筋コンクリート造の方が材料が硬くて頑丈なので、地震に対しても強いと思ってしまうのは、
地震に対する強さと、材料の強さがごちゃまぜになっているからです。
 
 道路際に建った建物で、自動車が建物に突っ込んできた場合には、木造だと壊れてしまい
ますが、鉄筋コンクリート造だと車の方が壊れてしまいます。
 
(地震に対する強さと、建物自体の強さは、別々に考えてください。(・Ω・)ノ )
 
 
 
 今回は、2階建て程度の低層の建物について書きました。
 建物の規模が大きくなったり、高層になっていくと、木造で建築することは難しくなっていきます。
 建物の重量が重くなっていき、それを支える為の柱や梁などのサイズも大きくなっていきます。
 柱と梁を繋ぐ接合部の強度も高いものが必要になっていきます。
 合理的に考えると、鉄筋コンクリート造の方が有利です。