公開日:2010/10/15 23:39
「耐力壁の考え方」
2000年の建築基準法改正で、地震に強い家作りの為の仕様や計画方法が強化されました。
地震や風圧の力に対して、建物は耐力壁で抵抗します。
建物に必要な耐力壁の量は、建築基準法で定められています。
法律を守って造られた建物なら、数字上はどの在来木造住宅もほぼ同じ強さの建物ですが、設計する人によって、耐力壁の数や仕様には違いがでます。
・高い倍率の耐力壁にするか、倍率を抑えて(低くして)たくさん配置するか
・耐力壁に面材(構造用合板など)を選ぶか、筋交いを選ぶか
広い部屋、大きな窓で壁が少ない建物、
壁が多い建物、というような間取上の違いがでてきます。
私の「耐力壁の配置計画」について書かせていただきます。
私は、
「低い倍率の耐力壁をまんべんなく配置して、建物全体で抵抗する」
ように計画しています。
そして、耐力壁は面材よりも筋交いを選んでいます。
1.耐力壁の仕様=面材or筋交い
以前は、面材の方が良いと思っていました。
2x4工法のように、壁面全体で抵抗するほうが、変形が少ないし、がっちりした壁になると思うからです。
でも、面材耐力壁の場合は、柱と横架材(土台や桁)にたくさんの釘で打ち付けます。
そして、構造用合板に使われている接着剤の化学物質の影響は?
気密性がUPすることによる、壁内結露の心配は?
など、いろいろ考えると、
やっぱり昔ながらの筋交い耐力壁の方がいいにかなと思うようになりました。
でも、筋交いにはいろいろと注意点があります。
(1)水平力の3倍増し
筋交いに作用する力は、軸組みの水平長さ(壁の巾)と高さの比で決まります。
壁の巾=0.91m 壁の高さ=2.73m の場合、
水平力=1に対して筋交いには3.2、柱には3の力がかかることになります。
(数学で、1:2:√3 とか、1:1:√2とか習ったやつ(^-^)ゞ ポリポリ)
そして、水平力は繰り返し作用するので、右から来たり左から来たりしますから、
筋交いに圧縮力がかかれば、引張力もかかることになります。
地震の力の3倍の引抜力が柱にかかることになります。
きちんと固定しておかないと、土台から柱が抜けて建物が壊れてしまう原因になります。
(2)圧縮筋交いとして考える
筋交いの端部の固定は、金物と釘での固定になりますが、
材質が木なので、鉄を溶接するようにがちがちに固定することはできません。
ですから、引張力を負担する考えよりも、圧縮力を負担するものとして考える方が合理的です。
圧縮筋交いとしての断面寸法は、3cmx9cm以上と決められています。
これは、間柱や壁仕上げ材によって、座屈が防止されていることを前提にしています。
ですので、筋交いを化粧で表しにするようなデザインや、
筋交いの隙間に窓をとるデザインなどはしないほうがいいと思います。
筋交い耐力壁の場合は、以上のようなことに注意しながら配置することが必要になります。
2.耐力壁の量と配置
上記で述べましたが、水平力の3倍の力が柱にかかることになるので、
できるだけ壁倍率の低い耐力壁にするほうが、家にやさしいと思います。
壁倍率とは、水平力(地震や台風)にどれだけ抵抗できる壁かを示す数字で、
数字が大きくなるほど強力な壁になります。
建物の大きさに対して、必要な壁の量は決まっています。
壁倍率の大きな耐力壁を選べば数は少なくてすみます。壁倍率が小さくなれば、それだけたくさん数が必要になります。
(黒い壁部分が耐力壁です。)
柱部分だけで見た場合、 強力な壁の力は、それだけ柱に伝わっていきますので、
柱もすっぽ抜けないように強力に固定しないといけなくなります。
(↓写真左:ホールダウン金物 左から10kN用15kN用20kN用25kN用です。
穴の部分にラグスクリューボルトM12で柱に固定していきます:写真右側)
.
見た目も痛々しいので、それだけ柱に負担がかかっていることを物語っていると思います。
建物全体で見ても、
建物の四隅だけ強い(硬い)壁があって、そのほかはやわらかい壁だけの建物と、
そこそこ強い壁が、あちこちに配置されていて、建物全体がある程度硬くなった建物
なら、 建物全体がある程度硬い建物の方がいいと思います。
「一人に無理させるより、みんなで協力してがんばる」そっちの方がいいと思います。
デザインと構造計画、両方のバランスがとれた建物の計画をしていきたいと思います。