耐震基準について

公開日:2010/10/15 23:25


1. 
 地震の多い国である日本では、建築物はデザインや居住性だけでなく、地震に対しての強度・
安全性も必要とされます。
 建築物を作る基準となる「建築基準法」では、どんな風に決められているかというと、
(1)中地震に対して =まれに発生する地震:50年に1回程度     
  震度5程度の中地震に対しては、建物の仕上げ、設備に損傷を与えない。 
 また構造体を軽微な損傷に留める。
  もし痛んでも、修理したら継続して使用可能な状態
(2)大地震に対して =きわめてまれに発生する地震:建物の試用期間内で1回有るか無いか   
  震度6程度の大地震に対しては、中地震の2倍程度の変位を許容するが、
 倒壊を防ぎ圧死者を出さない。
  修理して使用するのは不可能な状態だけど、人命を守る為に倒壊はしないという状態
という考え方で構造設計が行われています。
 どんなに巨大な地震が来ても大丈夫にする ということは、技術的な面やコストを考えると
合理的ではないので、上のような内容に基づいて、構造計算を行ったり計画を立てたりして設計
されています。
2. 建築基準法「耐震設計」の歴史
●1920年(大正09年)市街地建築物法施行
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 日本ではじめての建築法規。30年後に制定される建築基準法の原型といえる。
≪木造住宅において≫
構造基準などが定められる。耐震規定は少ない。筋違については、規定なしと思われる。
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●1924年(大正13年)市街地建築物法の大改正
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 佐野利器が提唱した「設計震度」が採用される。耐震規定が法規に初めて盛り込まれる。
鉄筋コンクリート造など水平震度0.1以上とする地震力規定が新設される。
≪木造住宅において≫
筋違などの耐震規定が新設された。
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●1950年(昭和25年)建築基準法制定
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 建築基準法が制定された。これに伴い市街地建築物法は廃止された。建築基準法施行令に
構造基準が定められる。許容応力度設計が導入される。
≪木造住宅において≫
床面積に応じて必要な筋違等を入れる「壁量規定」が定められた。この時に、床面積あた
りの 必要壁長さや、軸組の種類・倍率が定義された。
 
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●1959年(昭和34年)建築基準法の改正
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 防火規定が強化された。 ≪木造住宅において≫
壁量規定が強化された。床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が改定された。
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●1971年(昭和46年)建築基準法施行令改正
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 1968年の十勝沖地震を教訓に、鉄筋コンクリート造の柱のせん断補強筋規定が強化された。
≪木造住宅において≫
基礎はコンクリート造又は鉄筋コンクリート造の布基礎とすること。風圧力に対し、
見附面積に 応じた必要壁量の規定が設けられた。
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●1981年(昭和56年)建築基準法施行令大改正 新耐震設計基準
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 1978年(昭和53年)の宮城県沖地震後、耐震設計法が抜本的に見直され耐震設計基準が
大幅に改正された。現在の新耐震設計基準が誕生した。
 この、新耐震設計基準による建物は、 阪神大震災においても被害は少なかったとされ
ている。
 これを境に、「1981年昭和56年以前の耐震 基準の建物」や「1981年昭和56年以降の
新耐震基準による建物」といった表現がされるようになる。
≪木造住宅において≫
壁量規定の見直しが行われた。構造用合板やせっこうボード等の面材を張った壁などが
追加された。床面積あたりの必要壁長さや、軸組の種類・倍率が改定された。
 
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●1995年(平成07年)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
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●1995年(平成07年)建築基準法改正
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 ・接合金物等の奨励
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●1995年(平成07年) 建物の耐震改修に関する法律制定(耐震改修促進法)
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 1995年(平成7年)の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の教訓を活かし、その年の
12月に耐震 改修促進法が施行され1981年(昭和56年)以前の建物
(新耐震基準以前の建物)には耐震診断が 義務づけられた。
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●2000年(平成12年)建築基準法改正
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 ≪木造住宅において≫
1)地耐力に応じて基礎を特定。地盤調査が事実上義務化に。(施行令38条) 
改正の要点
・地耐力に応じた基礎構造が規定され、地耐力の調査が事実上義務化となる。
・地耐力20kN未満・・・基礎杭   20~30kN・・・基礎杭またはベタ基礎   
 30kN以上・・・布基礎も可能
2)構造材とその場所に応じて継手・仕口の仕様を特定。(施行令3章3節) 
改正の要点
・筋かいの端部と耐力壁の脇の柱頭・柱脚の仕様が明確になる。
・壁倍率の高い壁の端部や出隅などの柱脚ではホールダウン金物が必須になる。
3)耐力壁の配置にバランス計算が必要となる。
(簡易計算、もしくは偏心率計算 (施行令3章3節))
改正の要点
・壁量の簡易計算、偏心率の計算が必要となる。
   ・仕様規定に沿って設計する場合、壁量簡易計算を基本とする。
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●建築基準法以外での耐震関連の最近の動向
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 2001年(平成13年)09月 国土交通省、既存住宅の倒壊危険性を判別する為の耐震等級評
価指針 を公表した。
 2001年(平成13年)10月 品確法性能表示制度スタート 構造において耐震等級が
盛り込まれる。
 2001年(平成13年)10月 住宅の耐震性能や建設年代に応じて地震保険料を 割り引くという。
 でっかい地震が起きる度に、法律を改正して 1.の条件が満たせるような基準を決めています。