建前の後、木材が雨に濡れても大丈夫?

 木造住宅は着工から完成までに何か月もの時間を要します。その中でも、木材でできている構造材(柱や梁など)が、露出している期間が何か月か続くことになりますので、その間ずっと天気が晴れというわけにはいきません。雨が降り、外部に面している部分の木材は濡れることになります。

 建前当日に、屋根の防水紙(アスファルトルーフィング)まで張ってしまうことにより、ある程度の雨をしのぐことはできますが、軒の出が短かったり、2階建ての1階部分などは、雨に濡れてしまいます。まったく木材を濡らさないということは、なかなか難しいです。

 木材を雨に濡らしても大丈夫なのかというのが、心配になります。「雨に濡れると、ふやけて柔らかくなったり、強度に影響があるんじゃない?」なんだか鉄やコンクリートと違って、木が水に濡れるイメージというのは、弱くなりそうと思われるのではないでしょうか?

 ”少々雨に濡れても、強度上は大丈夫”なんですが。

 そのことについて、簡単に説明すると、以下のとおりです。

 

■木材の性質

 木材は生物材料ですので、細胞でできています。ということで、細胞レベルで水(水分)について考える必要があります。

 木材はたくさんの細胞が集まってできていますので、個々の細胞と細胞の間にある水と、細胞の中(細胞壁の中)にある水の2種類があります。前者は自由水、後者は結合水といいます。

 木材の乾燥が進んでいくと、まず自由水が外に出ていきます。完全に自由水が出て無くなった状況で、含水率30%程度です。

 含水率とは、全乾の重さに対する水の重さで表します。全乾とは全く水がなくて木材の組織のみの状態のことです。ということで、全乾の重さ以上に水を含むこともあり得るので、含水率120%なんてこともあり得ます。

 話を戻して、含水率30%の状態、自由水が無くなった状態のことを繊維飽和点といいます。更に乾燥が進むと、結合水が出ていき、空気中の湿度と釣り合う程度の状況になります。この状況で含水率15%くらい(日本の場合)です。この、含水率30%から15%にかけて、乾燥が進むほど木材の強度は増していきます。

 

 なぜ強度が増していくのか。

 

 木材の細胞は、セルロース、リグニンといった物質と水がくっついて構成されています。(セルロースは、マグネシウム合金と同じくらいの引張強さがあるそうです。)このセルロースとセルロースを繋いでいる水が抜け出ると、セルロースどうしが結合して、結晶化します。結晶化してしまうと、もう水はこの間にはいることはできません。がっちり固まります。含水率30%から15%にかけては、この現象が進んでいるわけです。

 ということで、細胞内の水分が無くなっていくので、収縮し、割れや反りといった症状が現れることになります。木材が乾燥して割れるのは、強度が低下しているのではなくて増していることの表れともいえます。 

 というのが、木材の性質です。

 このことを踏まえて、木材が雨に濡れることが問題かどうかについて考えてみましょう。

 

■無垢材

 柱や梁といった木造住宅の構造材が、雨に濡れた場合、表面から染み込んでいくことになりますが、それは細胞と細胞の間の自由水の状況です。細胞の中には入ることができません。ですので、雨に濡れても、しばらく乾かせばまた元の状態に戻ります。

 しかし長く湿った状態のままにしておくと、カビが生える原因になります。濡れた木材は、できるだけ早く乾かした方がいいと言えます。

 

■合板

 床下地に合板を使うことが多くなりました。合板は、薄くスライスした木材(単板)を、乾燥させて方向を変えて何層も張り合わせて作ります。合板を構成している単板の特性は、無垢材と同じです。単板どうしを貼り合わせている接着剤は、合板が使用される状況に応じて特類・1類・2類があります。特類は屋外や常時湿潤状態になる場所用。1類は断続的に湿潤状態になる場所用、2類はときどき湿潤状態になる場所。合板はある程度の水分は想定していることになります。なお、床下地などの構造用に用いる合板は、特類と1類になります。

 ということで、ある程度の耐水性を持っているので、雨に濡れても乾かせば大丈夫です。ただ、接着剤と単板は水の吸収の仕方が違うので、単板が収縮したり反ったりすることで、合板が変形することはあります。また、カビが生えたり、単板無いの木材成分が水で溶けだしてアクのようなシミが現れたりします。

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■参考資料

 木材の構造・性質と木造住宅 木材の長所を生かして使うために:(財)日本木材総合情報センター

 合板のはなし:日本合板工業組合連合会